「ねえ…正直、将来が不安じゃない?」
このまま家を買って、子どもが生まれて、老後を迎えるなんて…
想像もつかない自分がいました。
すると、向かいにいた経理部の先輩が教えてくれました。
「どうしたら資産形成できるかって思った瞬間が第一歩なんだよ」
「いったいどうやって資産形成を始めればいいのか?」
投資経験15年以上の私は、よくこの質問をされます。
実は、この質問こそが資産形成の第一歩なのです。
今回は、特に初心者の方々に向けて、資産形成の基礎となるマネーリテラシーについて解説したいと思います。
なぜ今、資産形成が重要なのか

少子高齢化が進む日本では、将来の年金制度への不安が高まっています。2050年には高齢者1人を支える現役世代の数が1.3人程度になるという試算もあります。
これは、私たち一人ひとりが自分の将来に対して責任を持ち、計画的に資産を形成していく必要があることを意味しています。
また、長引く低金利環境では、銀行預金だけでは資産が目減りしていくリスクがあります。インフレを考慮すると、実質的なマイナス金利状態となっているのです。
まず、この問題を理解するためには、「名目金利」と「実質金利」、そして「インフレ」の関係性を明確にすることが重要です。
- 名目金利(Nominal Interest Rate): これは、あなたが銀行預金などで目にする、表面上の金利のことです。例えば、預金金利が年0.001%と表示されていれば、それが名目金利です。長らく続いている日本の金融緩和政策のもとでは、この名目金利は非常に低い水準に抑えられています。
- インフレーション(Inflation): これは、物価が全体的に上昇し、お金の価値(購買力)が低下する経済現象です。例えば、昨年100円で買えたものが今年102円になった場合、物価上昇率は2%です。同じ100円を持っていても、買える物の量が減ってしまったことになります。
- 実質金利(Real Interest Rate): これは、名目金利から物価上昇率(インフレ率)を差し引いた金利です。「実質金利 = 名目金利 - インフレ率」という計算式で表されます。実質金利は、預金などの金融資産が、物価変動を考慮した上で実際にどれだけ購買力を維持・増加させられるかを示す指標です。
現在の日本の状況では、銀行の普通預金や定期預金の名目金利は、金融政策の影響で非常に低い水準(ほぼゼロに近い)にあります。一方、近年は世界的な物価上昇や円安などの要因もあり、以前と比べてインフレ率がプラスになる状況が続いています。
この状況下で実質金利を計算すると、以下のようになります。
実質金利 = (ほぼゼロに近い名目金利) - (プラスのインフレ率)
結果として、実質金利はマイナスになります。
これが「実質的なマイナス金利状態」と呼ばれるゆえんです。
実質金利がマイナスであるということは、あなたが銀行に預けているお金の「名目上の金額」はほとんど変わらないか、わずかに増えるだけであるのに対し、そのお金で「買えるモノやサービスの量(購買力)」は、物価上昇によって時間とともに減少していくことを意味します。
例えば、
名目金利が0.001%でインフレ率が1%だとします。
銀行に100万円を1年間預けると、利息はわずか10円です(税引き前)。
一方、物価は1%上昇しているので、昨年100万円で買えたものが、今年は101万円必要になります。
つまり、銀行預金の名目上の金額は100万10円になりましたが、購買力は実質的に約1万円分減少してしまったことになります。
このように、低金利環境下での銀行預金だけでは、得られる金利収入が物価上昇を相殺できず、資産の購買力が徐々に失われていきます。
これは、長期的な視点で見ると、将来必要になるであろう資金(例えば、住宅購入資金、教育資金、老後資金など)を準備する際に、目標とする購買力を維持するためには、より多くの金額が必要になることを意味します。
専門的な言葉を使えば、これは資産形成における「機会費用(Opportunity Cost)」の損失でもあります。
つまり、もしインフレ率以上のリターンが得られる他の資産(株式、投資信託、不動産など、ただしリスクも伴います)に投資していれば、資産の購買力を維持または増加させられた可能性があったにも関わらず、それを選択しなかったことによる潜在的な損失です。
したがって、長引く低金利とインフレが共存する環境下では、銀行預金は元本保全性が高い安全な資産である一方、資産の購買力を維持・向上させる機能は期待しづらく、実質的な価値が目減りするリスクに注意する必要があります。
これが、多くの専門家が、長期的な資産形成においてはインフレ率を上回るリターンを、目指して他の資産への分散投資の検討を推奨する理由です。
資産形成の3つの柱

「資産形成の基本」
1. 収支の把握と管理
2. 投資の基本原則
3. 税制優遇制度の活用
「やってみるか。俺も変わりたい」
資産形成を成功させるためには、以下の3つの柱を理解することが重要です。
収支の把握と管理
まずは自分の収入と支出を正確に把握することから始めましょう。
月々いくら稼ぎ、いくら使っているのか。
これを知らなければ、貯蓄に回せる金額も分かりません。
家計簿アプリをオススメしています。
使い始めて「コンビニでの小さな買い物が月に2万円を超えていた」と気がつきました。
見直すことで簡単に1万円の節約に成功しました。
実践ポイント
- 3ヶ月分の収支を分析してみる
- 固定費と変動費を明確に区別する
- 自動的に貯蓄される仕組みを作る(例:給料日に自動積立)
投資の基本原則
翌週、私はついに証券口座を開きました。
とはいえ、個別株やFXに飛び込む勇気はなかったです。
そこで
少額から、分散して、長期で積み立てることにしました。
「“卵を一つのカゴに盛るな”」分散投資の基本です
私は、月3万円の積立を始めました。
「怖いって気持ちは、知らないからだったんだな」と感じた瞬間でした。
投資には必ずリスクが伴います。しかし、リスクを理解し、適切に管理することで、長期的なリターンを得ることが可能です。
初心者が覚えておくべき基本原則は以下の通りです。
①分散投資 「卵は一つのカゴに盛るな」という格言があります。株式、債券、不動産など、異なる資産クラスに分散させることで、リスクを軽減できます。
②長期投資 短期的な市場の変動に一喜一憂せず、長期的な視点で投資することが重要です。歴史的に見ると、株式市場は長期では上昇傾向にあります。
③積立投資 毎月一定額を投資する「ドルコスト平均法」は、市場のタイミングを計る必要がなく、初心者にも取り組みやすい方法です。
税制優遇制度の活用
せっかく資産形成をするなら、国の税制優遇制度を最大限に活用しましょう。
①NISA(少額投資非課税制度) 2024年から新NISAが始まり、年間360万円までの投資に対して、利益が非課税となります。特に長期・積立投資を検討している方には必須の制度です。
②iDeCo(個人型確定拠出年金) 掛金が全額所得控除され、運用益も非課税、受取時も一定の優遇があります。老後資金の形成に特化した制度です。
毎月のiDeCo掛金2万3000円を続けることで、年間約7万円の税金が軽減されました。20年続ければ、税制優遇だけで140万円のメリットになります。
初心者がよく陥る3つの落とし穴

資産形成に取り組むうちに、私は職場の“投資自慢”たちの話が気になるようになった。
「今これが爆上げらしいよ」
「○○株、マジで狙い目」
でも、教えてくれた先輩は言った。
「資産運用って、情報量の勝負じゃない。軸を持つことが大事なんだ」
情報過多による行動の麻痺
「もっと勉強してから始めよう」と考えるあまり、行動に移せない方が多くいます。完璧を求めるより、小さく始めて徐々に知識を増やしていく方が効果的です。
短期的な結果へのこだわり
投資は長期的な取り組みです。月単位、四半期単位の成績に一喜一憂していると、感情的な判断で損失を確定させてしまうことがあります。
周囲の意見に振り回される
友人や同僚の「おすすめ銘柄」や「今すぐ買うべき」といった情報に飛びつくのは危険です。自分の資産状況やリスク許容度に合った投資計画を立てましょう。
資産形成の第一歩「今日からできること」

私は自分のゴールを紙に書きました。
【目標】60歳までに3,000万円の資産を築き、月15万円の不労所得を得る。
その紙を、毎月見直すことで、私の“迷い”は徐々に消えていきました。
ある日、私の母親が骨折して、入院することになりました。
急な出費に、母親も不安そうでした。
だが、私には“生活費6ヶ月分”の緊急資金(生活防衛資金)がありました。
「これがあるだけで、焦らないんだな」と感じたことがありました。
「投資より先に、緊急資金」という言葉が、初めて本当の意味で理解できた瞬間でした。
自分の将来目標を明確にする
「老後のために2000万円」といった漠然とした目標ではなく、「60歳までに3000万円の資産を形成し、その後は月に15万円の不労所得を得る」など、具体的な目標を設定しましょう。
緊急資金の確保
投資を始める前に、最低でも3〜6ヶ月分の生活費を流動性の高い預貯金で確保しておくことをお勧めします。
これは、予期せぬ出費や収入の減少に対する備えとなります。
小さく始める
月5,000円からでも積立投資は始められます。最初から大きな金額を投じる必要はありません。まずは習慣づけることが大切です。
まとめ:『継続は力なり』

株式マーケットが落ち込む日もあります。でも、感情に振り回されることはありません。
毎月、給料日に自動で積立が行われる仕組みが、すでに「習慣」になっていたからです。
資産形成で最も重要なのは「継続すること」です。
市場は常に変動し、時に大きく下落することもあります。しかし、長期的な視点を持ち、計画に沿って着実に積み上げていくことが、将来の経済的自由への道となります。
私も15年以上、資産形成を実践してきました。
積立からスタートし、徐々に金額を増やしていきました。
新型コロナウイルスの影響で大きく資産が減少する時期もありましたが、慌てずに継続したことで、現在は当初の目標を超える資産を形成することができています。
皆さんも今日から、ご自身の将来のために一歩を踏み出してみませんか?
資産形成は、決して難しいものではありません。正しい知識と継続する力があれば、誰でも成功への道を歩むことができるのです。
コメント