「え? 瞑想の本を配ったの?」葬式で渡された“白い箱”の中身
スティーブ・ジョブズ氏が2011年に亡くなった際、
スタンフォード大学で行われた追悼式典に列席した人々に手渡された、白いシンプルな箱。
その中身を開けて、参列者は驚いた。
中に入っていたのは、ある一冊の本。
パラマハンサ・ヨガナンダの著書『あるヨギの自叙伝(Autobiography of a Yogi)』
「この本こそが、彼が人生を通して大切にしていたものなんだ」と、親しかった人々は語ります。
これは彼の人生哲学を象徴する「最後のギフト」とも言われています。
スティーブ・ジョブズというと、「iPhone」「Mac」「イノベーションの天才」など、ハードウェアと未来技術の象徴のように思われがちです。
しかしその創造性の核心にあったのは、意外にも内面を見つめ時間=瞑想だったのです。
20代のジョブズを変えた、インドと禅の旅
1974年、ジョブズは突如アップルを離れ、インドへ旅に出ます。
「人生の意味を探しに行った」と本人は語っています。
帰国後、深く禅の道に傾倒していきました。
「傾倒(けいとう)」は、ある人や物事に深く心を引かれ、夢中になること、心から尊敬し慕うことを意味します
この時期に芽生えた「今ここに集中する力(マインドフルネス)」こそ、後のジョブズのプレゼン、製品哲学、ユーザー体験すべてのベースになっていきます。
禅との出会い
1970年代、ジョブズは若い頃から東洋思想に興味を持ち、インドを旅した後、アメリカに戻ってから、曹洞宗の禅僧である 乙川 弘文のもとで本格的に禅を学びました。
曹洞宗の禅僧である 乙川 弘文
乙川師はジョブズの結婚式で司式を務めました。
瞑想を習慣にしていた
ジョブズは毎朝20分の瞑想を欠かさなかったと言われています。これにより「直感」「集中力」「創造性」が研ぎ澄まされたと語っていたようです。
「初心者の心(Beginner’s Mind)」という概念を重視
禅の教えの中でジョブズが特に大切にしていたのが『初心者の心』(Shoshin)。これは「すでに知っているという思い込みを捨て、何事にも新鮮な目で向き合う」という禅の基本姿勢で、製品開発にも大きな影響を与えました。
なぜ瞑想が創造性を高めるのか?
最新の脳科学・心理学でも、ジョブズが選んだ道が正しかったことが証明されています。
DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)の抑制
雑念を減らすことで脳が「今」に集中し、深い思考が可能に。
DMN(デフォルト・モード・ネットワーク)とは
私たちが特定の課題に集中していない「デフォルト状態」のときに活性化する脳内の神経ネットワークです。内側前頭前皮質、後帯状皮質、楔前部などの脳領域から構成されており、自己参照的思考、過去の回想、将来の計画立案、社会的認知などと関連しています。
創造性の向上
スタンフォード大学の研究では、瞑想を日常的に行う人はアイデア創出スピードと量が大きく高まると報告されています。
DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビューの記事の中には、
スタンフォード大学工学部の学生を対象にした、15分間のマインドフルネス瞑想が、拡散的思考のパフォーマンスに与える影響を、調査した研究についての言及があります。
この研究では、通常時のマインドフルネスが高い学生は、アイデア創出タスクでより良い成績を示したとされています。
ストレスの軽減と意思決定の質の向上
副交感神経が優位になり、長期的な視野をもつ決断ができるようになります。
副交感神経が優位な状態とは?
体がリラックスし、ストレス反応が抑えられます。これにより、脳の感情を司る部分(扁桃体)の過剰な活動が鎮まり、理性や計画性を担う部分(前頭前野)が本来の能力を発揮できるようになります。
結果として、目先の感情や利益に流されず、将来の影響や複雑な状況を冷静に分析し、長期的な視点に基づいた合理的で衝動的でない決断を下すことが可能になります。
つまりジョブズは、「集中力」「創造性」「判断力」すべてを磨くために、あえて“何もしない時間”を設けていたのです。
「余白」に価値を見出したジョブズの哲学
ジョブズは常に「削ぎ落とす」ことにこだわりました。
iPhoneのホームボタンが1つなのも、Macのデザインがミニマルなのも、すべては本質に集中するための思想の表れです。
これはまさに瞑想の本質とも重なります。
「瞑想は、考えることをやめる練習ではなく、いまの思考に気づくこと」──禅の教え
“静けさ”の中にこそ、答えがある。
ジョブズはそのことを誰よりも理解し、実践していたのです。
社会人こそ、「瞑想」を取り入れるべき理由
- マルチタスクに疲れた頭をリセット
- ノイズに惑わされず、自分の軸を保つ
- 日々のストレスを俯瞰して眺められる
- 長期的視点でキャリアと人生を選べるようになる
ジョブズはまさに、瞑想によって「膨大な情報から本質を見抜いた人」でした。
今すぐ始められる!マインドフルネス瞑想のステップ
1.背筋を伸ばして座る(椅子でもOK)
2.呼吸に意識を向ける(吸って、吐いて…)
3.雑念が浮かんでもOK。気づいて戻す。
4.1日5分から始めよう。
まとめ:「いま、ここにいる」未来を変える最初の一歩
私たち社会人は、日々のタスク、情報、他人の目…さまざまな“ノイズ”に翻弄されがちです。
でも、ほんの数分「自分の内面と向き合う」ことで、思考は研ぎ澄まされ、進むべき道が見えてきます。
ジョブズが最後に伝えたかったこと。
それはきっと、「最先端の未来も、深い“今”の思考から生まれる」というシンプルな真実なのかもしれません。
スティーブ・ジョブズ名言
“If you just sit and observe, you will see how restless your mind is… If you try to calm it, it only makes it worse, but over time it does calm, and when it does, there’s room to hear more subtle things — that’s when your intuition starts to blossom.”
― Steve Jobs
(「ただ座って心を観察してみてごらん。最初はどれだけ落ち着かないかがわかる。でも続けていくと、やがて静まっていく。すると、微細な直感の声が聴こえてくるんだ。」)
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